【日々レビュー記】『罪と罰』[第1篇-2前半]:酒場の飲んだくれマルメラードフの告白

📖 今回読んだ範囲

ラスコーリニコフが酒場へやってくる場面 ~ 酒場で知り合ったマルメラードフの告白(途中)まで

📝 あらすじ・要約

ラスコーリニコフは、普段は人付き合いを避ける性格ながら、ふと人と関わりたくなり酒場へ足を運ぶ。そこで出会ったのが、ボロをまとった中年男――マルメラードフ。彼の方から話しかけ、半ば一方的に身の上話を始める。

彼は妻カチェリーナ・イヴァーノヴナや連れ子たち、娘ソーニャとの複雑な家族関係、そして貧困によって酒に堕落した生活について、延々と語り続ける。

  • 貧困により自尊心がすり減り、酒に逃げた過去
  • 再婚した妻はよくできた妻だが、生活苦と夫の無責任に怒り狂う日々
  • 娘ソーニャが売春により一家を支え始め、ついに“黄色い鑑札”を持つ身になった
  • マルメラードフは無職だったが、高位高官の知人に頼み込み職を得る

ラスコーリニコフは、ただ黙ってそれを聞いていた――。

💭 感想

酒場で出会った見知らぬ中年の“愚痴”とも言える語りを、主人公ラスコーリニコフはなぜ黙って聞き続けたのか。
きっと、マルメラードフの語る貧困や絶望は、彼自身が抱えている内なる葛藤や孤独に響くものがあったのでしょう

マルメラードフの語りは、始まりから支離滅裂で、唐突な場面転換も多い。それでも徐々に家族の実情が明らかになる構成は、ドストエフスキーの巧みな筆致を感じました。

👤 人物メモ(登場人物の簡易リスト)

名前説明
ラスコーリニコフ主人公。貧乏な学生。人付き合いは苦手。
マルメラードフ酒場で語る中年官吏。九等官。ソーニャの父。
カチェリーナ・イヴァーノヴナマルメラードフの妻。ソーニャの継母。
ソーニャマルメラードフの娘。売春で家計を支える。
レベジャートニコフソーニャに冷たく手のひらを返す男。
アマリヤ・フョードロヴナ・リッペヴェフゼル大家。売春婦となったソーニャの同居を拒む。
ダーリヤ・フランツォヴナ警察のご厄介になる性わる女。ソーニャを密告。

📘 わかった&調べた言葉

用語意味・解説
黄色い鑑札19世紀ロシア帝国の公娼制度で、売春婦に発行された登録証明書。多くが黄色い紙だったため「黄色い鑑札」と呼ばれた。登録者には定期的な性病検査が義務付けられており、衛生管理を目的とした制度だが、差別や監視の象徴でもあった。
九等官ロシア帝国時代の官等表の第9等級。下級官吏であり、役所で働く中堅クラス。高い地位ではないが、一定の社会的信用はあった。
ネヴァの乾草舟(ほしくさぶね)ロシアのネヴァ川を行き交う、乾草を運ぶ小舟のこと。ペテルブルクの日常的な風景で、貧しい人々の生活の一部を象徴している。
カルタ賭博トランプやカードを用いた賭け事。
ドラゼダームのショールドラゼダームは生地の種類。安価な布の1つで織られたショールで、貧困層の間で使われていた。
定員改正国家の予算や人員配置の見直しにより、役人のポスト数を改めること。マルメラードフはこれにより職を失ったと説明している。
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※この投稿は、ドストエフスキーの『罪と罰』をじっくり読みながら、感想や考察を記録していくシリーズの一部です。
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