【日々レビュー記】『罪と罰』[第2篇-2]:証拠を捨てる男と唯一の理解者

小説『罪と罰』

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ラスコーリニコフは、警察が家宅捜索に来るのではと怯えていた。急いで下宿に戻り、犯行現場から持ち出した品々をどう処分するか思案する。人目につかない場所を探し、寂れた場所にある石の下へ品物を隠すと、心はわずかに軽くなる。

しかし、かつて少女を助けた場所を通ると気持ちは沈み込み、馬車に轢かれそうになったうえ、通行人に笑われる。さらに物乞いと勘違いされて施しを受け、それを投げ捨てる。

その後、唯一の友人ラズーミヒンの家に行く。みすぼらしい姿で現れたラスコーリニコフは、彼に驚かれる。さらに支離滅裂な言動を見せつつ、翻訳の仕事を勧められるが、一度受け取ってから突き返す。この態度にラズーミヒンは理解できず困惑する。

下宿に戻ると、おかみさんと副所長が争っているような声が聞こえる。しかし女中ナスターシャに尋ねると、そんな事実はないと言う。どうやら幻聴らしい。ナスターシャは「血が暴れているせいだ」と説明し、彼の体調を気遣いながら食事を勧める。その後、ラスコーリニコフは昏睡状態に陥る。

🧠 感想と考察

今回のラスコーリニコフの行動は、一見すると理解不能です。犯行で得た品物や財布を捨て、仕事を欲しいと言ったかと思えば突き返し、ついには幻聴まで聞く。しかし、彼の立場に立って考えれば、その選択には理由が見えてきます。

殺人の証拠となる物を手元に置くのは危険そのもの。金銭的価値よりも、逮捕の恐怖の方が勝る。翻訳の仕事を突き返したのも、経済的困窮より罪の重圧が心を支配しているからでしょう。ラズーミヒンから見れば不可解でも、彼の内面は必死に危機回避をしているとも考えられます。

興味深いのは、かつて少女に金を与えた立場から、今回は施しを受ける側に転落している点。これは彼が自分でも意識していない社会的な没落の象徴といるかもしれません。

そして、唯一彼の内面に寄り添おうとするナスターシャの存在が際立ちます。彼女は幻聴を否定しつつも、それを彼の体調や血の状態からだと説明し、食事を勧める。その優しい対応は、彼の孤立した世界に一筋の光を差すものです。外の世界と彼の内面との乖離をつなぎうる存在が、ここで初めて明確に現れたように感じました。

🧍‍♂️【登場人物表】(今回の範囲)

人物説明
ラスコーリニコフ主人公。犯行の罪悪感と不安で精神的に追い詰められている。
ラズーミヒンラスコーリニコフの友人。面倒見がよく、仕事を紹介しようとするが彼の行動を理解できない。
ナスターシャ下宿の女中。ラスコーリニコフを気遣い、唯一彼の状態を受け止めようとする人物。
女将さん(ザルニーツィナ)下宿の大家。今回は幻聴の中で副所長と争っているように聞こえる。
副所長幻聴の中で女将さんを殴ったとされるが、実際にはその事実はない。

📝 まとめ

今回の章は、ラスコーリニコフの内面の混乱と現実の乖離が強く描かれていた。外から見れば不可解で滑稽な行動も、彼の恐怖や罪悪感を通すと、一定の筋道が見えてくる。そして、ナスターシャという理解者の存在が、今後の物語でどのように作用するのかが気になる場面でした。

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※この投稿は、ドストエフスキーの『罪と罰』をじっくり読みながら、感想や考察を記録していくシリーズの一部です。
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