【日々レビュー記】『罪と罰』[第1篇‑7]: 悲劇の「決行」とラスコーリニコフの内なる破綻

小説『罪と罰』

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ラスコーリニコフは、ついに質屋の老婆・アリョーナを殺害してしまう。

前節で語られた「偶然」の数々を背に、夕刻、下宿の庭番小屋から斧を取り出した彼は、老婆の住む建物へと足を運ぶ。

老婆の部屋でいつものように品を差し出すと、彼女が戸棚に手を伸ばした一瞬をつき、斧で頭部を殴打。老婆は即死する。

急いで金品を探し始めたそのとき、思いがけず妹リザヴェータが帰宅。ラスコーリニコフは咄嗟に彼女も殺害してしまう。

その後、部屋に誰かが入ってくる気配がし、やむなく別の部屋に身を隠してやり過ごす。訪問者たちは異変に気づき戸を破ろうとするが、結局去っていき、彼は間一髪で逃げおおせる。

🧠 感想と考察

共感からくる痛ましさ

この章を読みながら、胸が締めつけられるような悲しさがこみ上げてきました。
「本当にやらなくてもよかったのに」――そう思わずにいられなかったのは、ここまで読んできて、ラスコーリニコフという人間にある種の共感を覚えていたからです。

自分より劣っていると感じる相手に対して優越感を持つこと、人を見下してしまうこと、感情的になって危うい衝動に駆られること――そうした経験は、多かれ少なかれ誰の中にもあるのではないでしょうか。

もちろん実際に手を下すことはしない。なぜなら人生を失ってしまうからです。しかし、もしも最悪のタイミングが重なっていたら……それはまさに今回ラスコーリニコフが陥った状況そのものでした。

彼は「悪意のある殺人者」ではなく、「壊れてしまった人間」なのでしょう。だからこそ、読んでいて非常に痛ましく、やるせなかったのです。

殺意の先にある「恐怖」

事件後の彼の行動はまるで悪夢のよう。盗み出した金品をどうすることもできず、パニックの中で動き、逃げ惑う姿は、まさに彼の「精神の崩壊」を象徴しているようです。

彼の考えていた“理論”(計画といってもいい)が、現実の行為に耐えうるものではなかった。彼自身が、それを一番深く感じているのではないでしょうか。

🧍‍♂️【登場人物メモ】

人物立場・特徴
ラスコーリニコフ貧窮学生。老婆殺害を決行し、結果的にリザヴェータまで手にかけてしまう。
アリョーナ・イヴァーノヴナ質屋の老婆。ラスコーリニコフに斧で殺害される。
リザヴェータ・イヴァーノヴナ老婆の妹。偶然帰宅し、ラスコーリニコフに殺されてしまう。
コッホ老婆と会う約束をしていた男
若い男老婆の部屋の前でコッホと居合わせた男。予審判事を目指しているらしい。

📝 まとめ

この章は、物語の大きな転換点でした。これまで空想で語られていた“理論”が、現実の血で塗り替えられた瞬間です。

ラスコーリニコフは自分の理屈に従って行動したはずでしたが、その直後から全てが崩れ始める様子は、読者に強烈な印象を残します。

「罪」が起こったいま、「罰」はどうやってやってくるのか。ラスコーリニコフの精神がこれからどう揺らぎ、変化していくのか、注目したいところです。

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※この投稿は、ドストエフスキーの『罪と罰』をじっくり読みながら、感想や考察を記録していくシリーズの一部です。
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