【日々レビュー記】『罪と罰』[第1篇-4]:母の手紙と少女との邂逅

罪と罰

🕊️ 愛が重すぎるとき——ラスコーリニコフの葛藤

ラスコーリニコフの元に届いた母・プリヘーリヤからの手紙は、彼の心に大きな動揺をもたらします。

妹ドゥーニャが、自分のために不本意な結婚を決意したこと。母親もまたその決断を支えていること。それは彼にとって「自分が大切な人を不幸にしている」という事実を突きつけるものでした。

しかもその自己犠牲の構図は、マルメラードフの娘・ソーニャと重なります。ラスコーリニコフはこう考えます。

「妹が結婚して手に入れる“さっぱりした生活”は、ソーニャが売春によって得たそれと本質的には同じではないか」

彼は自責の念に押し潰されそうになりながらも、自分に何かができるわけでもないという無力感に苛まれます。

🚶‍♀️ 街角の少女と“義侠ごっこ”の虚しさ

そんな心の揺れの中、彼は街で奇妙な少女に出会います。14~15歳ほど、明らかに酔っていて、服ははだけ、ふらつきながら歩いている。その背後には、明らかに彼女を狙っている紳士風の男。

ラスコーリニコフは彼女を救おうと警官に声をかけ、自分のお金で馬車に乗せて家まで送ろうとします。だが少女は住所を明かさず、やがてその場を離れていく。

その直後、彼の心がひっくり返るような変化を見せます。「放っておけ」と警官に吐き捨てるのです。警官はわけがわからないですよね。さっきまで助けてあげろと言っていた人が、その逆を言うのだから。

ラスコーリニコフは急に冷めてしまったのです。どうせ確率だ、不幸な人間は一定数そうなる運命なのだ。しかもなけなしの金をまたあげてしまった、と悔やみます。そもそも俺の金じゃない、母からの仕送りの金なのに、と。

まるで先ほどの“義侠心”を自ら嘲笑うかのように、手のひらを返します。助けたつもりの自分を軽蔑し、笑い、やり場のない怒りと空虚さに囚われるラスコーリニコフ。

彼の中に渦巻く矛盾と苦悩は、さらに深くなっていくのでした。

🧠 感想と考察

  • 大切な人からの愛が重荷になる瞬間
     ラスコーリニコフの「苦しみ」は、自分が愛されていることそのものに起因しています。普通なら嬉しいはずの愛情も、彼の現状では「申し訳なさ」と「無力感」に変わってしまう。
  • “助けたい気持ち”と“無力な自分”の間で揺れる
     街の少女を助けたいと動いたものの、実際にできることは限られており、それに気づいた途端、彼は自分の“正義感”すらも否定してしまいます。
  • 現実は確率でしかないというあきらめ
     不幸は一定数起こるもので、それを変えられると思うのは思い上がり——ラスコーリニコフの冷めた見方が、今後の思考にも影響していきそうです。

🧾 登場人物メモ

名前概要
プリヘーリヤ・ラスコーリニコヴァラスコーリニコフの母。息子を心から愛し支援している
ドゥーニャ(ドゥーネチカ)ラスコーリニコフの妹。兄のために結婚を決意した
ソーニャマルメラードフの娘。家族のために売春をしている
街の少女酔ってふらついていた少女。堕落した社会の象徴のような存在
謎の紳士少女を狙っていた男。ラスコーリニコフに追い払われる
警官ラスコーリニコフに協力し、少女を守ろうとする人物
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※この投稿は、ドストエフスキーの『罪と罰』をじっくり読みながら、感想や考察を記録していくシリーズの一部です。
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